2021年12月31日金曜日

Sense of Wonder

もうあとわずかで今年も終わる。つい2週間ほど前、良い言葉を知った。Sense of Wonderだ。森羅万象、あらゆることに対して胸躍らせることが出来る感覚。感じられるちから。環境生物学者のレイチェル・カーソンの随筆集のタイトルでもある言葉だ。

思い起こせば、今からおよそ12年前の正月、2010年1月3日。何気なく散歩した近所の公園でコバルトブルーの一閃を見たのがそもそもの始まりだった。「えっ、こんなところにカワセミがいる!カワセミだぞ!」。この思わぬところに見つけたあこがれのいきものとの出会いに胸躍らせたこと。それが一瞬にして、小学校時代の夏休みを思い出させた。捕虫網のかわりにカメラを持って、あらたな「えっ、こんなところに!」を見つける趣味が始まった。

ここにきて、「か」という言葉の危険性に気づいている。12年前にときめいたカワセミを見て、心の中で「ああ、また、カワセミ」とつぶやいている自分を見出すことがあるからだ。この「か」は Sense of Wonder が衰えた印なのではないだろうか。「・・・か」とつぶやく前に Wonder に改めて気づけるようになりたい。何せ、世の中は、Wonderに満ちているのだから。Wonderfulなのだから。

ジョウビタキのメス。都会でも、住宅地のちょっとした庭先ででも見つけることができる小鳥だ。この小鳥、夏はモンゴルのあたりまで渡って営巣するという。そんな長い旅を春に秋に繰り返している。それだって Wonder じゃないか。
よく見ると小さな虫を捕まえている。この真冬の時期でも虫をとらえて命をつないでいる。虫がいることだって Wonder ではないか。と、思っていたらどこへやら飛び去ってしまった。しかし・・・

すぐにまた見つけた。小屋の屋根の上にいた。でもすぐにまた飛び去ってしまった。飛び去ってしまたけれど、きっとその先にはまた新たな Wonder があるに違いない。

最近ちょっとしたことで、意外な展開。これまで見知らぬ人だったご近所さまと思わぬ縁(えにし)に恵まれた。本当に Wonder だった。なんて、Wonderful な場所に住んでいるのか、まざまざと感じた。

新型コロナ禍で今年も大変な一年だった。大変な苦労をされた医療関係者、不幸にも罹患してしまった方、さらに不幸にも大切な人を亡くしてしまった方。仕事に支障をきたし、大変な苦労をされた人。来年こそは、さまざまな人に Wonderful な年になるように祈ります。

最後にこのような Wonderful な公園を維持管理しいただいている職員の皆さん、ボランティアの皆さんに感謝の言葉をささげたい。

来年もよろしくお願いします。

2021年12月8日水曜日

いちばん小さいキツツキ

良く気を付けていると山手線の内側でも見つけられる野鳥ってどのくらいいるだろうか。スズメ、ハシブトガラス、ハシボソガラスは少なめかな、シジュウカラ、ツバメ、ハクセキレイ・・・と、実はかなりの数を挙げることが出来る。オオタカ、ハヤブサなどという猛禽、カワセミも。キツツキの仲間も見つけられるはずです。

こちらはコゲラです。日本で見られるキツツキの中で最も小さなキツツキです。サイズとしてはスズメを二回りくらい大きくした程度。
このとりさんも、晩秋から初冬の森の色によく似合う。この個体はおそらくメス。

よくシジュウカラやエナガの群れと一緒に行動している。キツツキだから樹をつついて餌を探す。そんなことをやっているうちに同行しているシジュウカラなどから取り残される。とり残されたのに気づくと慌てて追いかける。そんな姿も愛らしい。最近、シジュウカラはかなり高度な情報交換を声で互いにしていることが確認されたと聞きました。このような種を超えた鳥の群れのことを混群と呼びます。もしかすると、この混群を構成する様々な種類の鳥たちも種を超えて情報交換ができているのかもしれませんね。

シジュウカラの声を分析して、情報交換していることを突き留めた、京都大学の鈴木俊貴先生は「動物言語学」を提唱されています。ドリトル先生って、実は実在の人物だったりして。
ところで、動物の写真を撮るときのポイントは目にあると、よく言われます。鳥の写真も同じです。目にピントが合い、露出(光の強さ)が合い、さらに目に光が反射して表情が生まれると、可愛らしくなります。これはペットの写真を撮るときも同じことが言えます。このコゲラを撮影していた時は光の射し込む角度が良い感じでした。最近のデジタルカメラでは人の目だけではなく、犬や猫の目、さらには鳥の目も自動的に検出してピントを合わせる機能が付いたものもあります。この自動的に被写体を認識してピントを合わせる技術はライバルメーカーどうしで激しい開発競争が繰り広げられていて急速に発達を遂げています。

コゲラは鳴き声で見つけることもできます。「ギョー」とかいった感じかな。覚えやすい鳴き声です。Youtubeなどで探してみてください。そんな声が聞こえたら、そして、もし頭の上から木くずが落ちてきたら。樹をつつく「コンコンコン・・・コンコン」とかいう音が聞こえたら、足を止めて探してみるのも面白いでしょう。何かと忙しい師走。どうしても足早に通り過ぎがちですが、そこは一息入れて足を止めてみてはどうでしょうか。


2021年12月7日火曜日

むし、あわれ

引き続き、リュウキュウサンショウクイ。どうやら何羽も飛来してきているようだ。何か加えている。緑色をしたもの。カマキリか?いやカマキリではなさそうだ。よく見ると特徴的な産卵管が見える。クダマキモドキの仲間だ。サトクダマキモドキ?ヒメクダマキモドキ?わからない。もう虫の命の季節が終わる。終わろうとしているときに、つかまってしまった。
虫の翅の色が曇り空に透ける。草緑色。この色が、もはや仇となる季節になる。落葉樹が枯木立になったとき、この色はあまりにも不自然だ。だから見つかってしまったのか。
リュウキュウサンショウクイにとっては、すこし大き目な獲物。ちょっともてあそんでいる。なかなか飲みこめない。
少し放り投げるようなそぶりもする。もう少し暖かさが残っている季節ならばこの瞬間に逃げおおせることもできただろうに。10℃。あるいは届かないか。このような気温は虫のような変温動物には酷だ。動きは鈍い。

結局リュウキュウサンショウクイに咀嚼されてしまった。虫の命がここで尽きる。ここで尽きなくても、おそらく時間の問題だっただろう。間もなく多くの虫たちにとって眠りの季節に入る。卵の形で眠りにつく。木の葉の陰で幼虫の形で眠りにつく。ゲンジボタルは小川に積もった落ち葉の陰に潜んでいる。蛹の形で、繭にくるまれて冬を耐える。なかには成虫が寄り添って冬を越す。テントウムシ(ナミテントウ、ナナホシテントウなど)は成虫で冬を越す代表格。ほかにもタテハチョウの仲間、シジミチョウの仲間にも成虫で冬を越す種類がある。トンボでもオツネンイトトンボとかホソミイトトンボなどは成虫で冬を越す。オオスズメバチは女王バチがどこかに潜んで冬を過ごす。

フユエダシャクのような真冬に活動する例外もあるけど。

春よ、来い!


2021年11月21日日曜日

北上種

果たして、本当にそういう言葉があるのかどうか。ふと思いついた言葉。「北上種」。岩手県北上のことではなくて「ほくじょう種」。このところ、「本来ならば南方で生息する種なのだがこちらでも見られるようになった」という種があまりにも多い。陸上だけではなく、海の中でも同様だそうです。東京湾で沖縄サンゴ礁の魚が見つかった。そのような話がときおり話題に上ります。昆虫だと、たとえばツマグロヒョウモン。これは南方の高原で見られる蝶。これが関東地方でも普通に見られるようになりました。これには幼虫が食べる植物(食草)が都市部で豊富だということもありそうです。食草の代表格はパンジー。都会でパンジーがたくさん生えているのを見つけたんですね。ツマグロヒョウモンは。この幼虫、黒で赤い棘のようなものが全身にはえているなかなか毒々しい姿だけど、案に反して毒は一切ありません。直接触ってもきっと大丈夫ですよ。

この写真は、リュウキュウサンショウクイ。名前が示すように、もともと南九州や沖縄方面で生息していたサンショウクイという野鳥の亜種です(別の種とされていることもあるそうです)。このリュウキュウサンショウクイの北上が最近各地で確認されています。南関東でも同様で、秦野市では営巣し繁殖したという報告もあります。
どちらかと言うと高木の梢あたりが好きなようで、なかなか写真におさめさせてくれません。これはラッキーでした。サンショウクイという名前は、鳴き声にあるようです。「チリチリチリチリ・・・」そんな感じ。山椒を食べたら刺激が強くてチリチリチリチリする。そんないわれで山椒喰いという名前をいただいたそうです。サンショウクイもリュウキュウサンショウクイもチリチリ鳴きます。ただし周波数成分が微妙に違うという話もあります。
さて、なんでリュウキュウサンショウクイが北上しているのか。地球温暖化の影響はやはりあるのでしょうね。このような生物の北上がどのような影響を環境に与えるのか。これは専門家にゆだねるしかないことです。
谷川俊太郎さんの「鳥」という詩を思いだしました。

鳥は虫を名付けない
鳥は虫を食べるだけだ

鳥は愛を名付けない
鳥はただふたりで生きてゆくだけだ

この詩になぞらえていうのならば、

鳥は地球環境を憂えない
鳥は地球環境に適応するだけだ

あらゆる北上種が確認されています。これは何のことはない、環境変化に対してしなやかに適応し、種をつないでいく。まさにダーウィンの進化論を地で行く話がただ単に展開しているだけなのでしょう。鳥にとっては。その結果がどうなるか、それは預かり知るところではありません。リュウキュウサンショウクイも同じです。環境が変わってきたから単純に北に居を移して変わる環境に適応しただけ。そして適応できない種は衰退し絶滅に向かうだけ。


さて、人は、どうすればいいのでしょうか。地球温暖化は人の営みによって排出される二酸化炭素やメタンガスの影響がもはや否定することは不合理だ、と国連の関連機関は指摘しています。人は、リュウキュウサンショウクイのように変化する環境に適応できるのでしょうか。到底私にはわかりません。

人も鳥と同じように、多くの生きものと同じように人も人の気持ちの赴くままにただ単に環境の変化に適応していけばいいのでしょうか。人は他の生きものと違って地球環境全体に影響を及ぼす存在になってしまったのがほぼ確実だというのに。そして、種としての繁栄をつづけるのか、それとも滅亡へ向かうのか。すべてを進化と言う摂理にゆだねるのか。

次の写真は2011年4月30日に撮影したサンショウクイです。サンショウクイは夏に北に渡り冬に南に帰る渡り鳥です。一方、リュウキュウサンショウクイは一年中新天地にとどまっている様子がうかがえます。


2021年11月14日日曜日

住宅難

おそらく人にとって最も身近ないきものの一つでしょう。このとりさん、見知らぬ人はほとんどいないのではないでしょうか。そう、スズメです。かなり動きが激しく警戒心もそれなりにある野鳥ですから、意外と撮影にちょっとてこずることもあります。今日は、思いきり見つめられてしまいました。撮影したときはシャッターを切るのに手いっぱいだったのですが、なんとなく絵になっているかな。目の周りが黒い鳥。カラスとかスズメとか、黒ではないけど黒に近い色をしたツバメとか、目の中に光の反射を入れるとより生き生きとした絵になります。
おそらくスズメの視線は完全に私をとらえていたでしょうね。ちょっと対話しているような感じになりました。
「あのねえ、このところずっと住宅難で困っちゃっているんですよ。」
「えっ?スズメのお宿の問題?」
「まあ、お宿というか、住みかと言うか。子育ての場と言うか。」
どうもスズメの営巣場所難は都市部でかなり深刻なようです。住宅の構造が変わって軒下という絶好の営巣場所が次々と無くなっているから。この撮影場所の周囲でも例えば交通信号機のパイプの中で営巣しているような事例すらあります。向井潤吉画伯が遺された藁ぶき屋根の古民家の時代はスズメが巣作りをする場所もたくさんあったのでしょう。昭和の木造家屋でもまだ軒下にスズメの営巣に向いた隙間があったはずです。でも今の住宅は隙間なし。それは断熱効果、省エネルギーの観点からは大いに合理性があります。しかし、スズメにとっては迷惑な状況。
スズメは、人が作り出した環境に適応し、人と寄りそう形で種をつないできたいきものです。人が自らの住居と言う環境を変貌させるという新たな環境変化にまさに晒されているということです。この環境の変化にスズメはどのような適応をしていくのか、進化するのか。
「なあなあ、なんだか面倒なことになっているみたいだよ。」
「そういえば、じいさんとかばあさんとか言っていたよな。昔は巣を作る場所に苦労はしなかったって。」
とか会話をしている、わけないですね。
スズメというありきたりなとりさんだけど、実際に撮影すると結構美しさのようなものも感じます。人の暮らしの風景にとても良く似合って。


2021年11月7日日曜日

ジビエ料理の季節へと

11月15日は、狩猟解禁日です。日本では、いや日本でも、と言う方が正しいでしょう。日本でも狩猟の対象として認められた野生動物は限られています。食用のため、生態系のバランスを取るため。農林業被害を抑制するためなどの背景があるはずです。鴨の仲間は、食用に供されることが多いのではないでしょうか。もちろんどこでも狩猟をしていいわけではありません。鳥獣保護区、休猟指定地域などでは厳格に狩猟は禁止されています。また、誰でも狩猟をしていいわけではありません。許可を得なくてはなりません。

カモ類の狩猟は散弾銃などを使った猟法のほかに、網を使った猟法もあります。たしか石川県だったか。網を空にかざして飛び立ったカモ類を捕獲するのです。なんていう猟法だったかな。ああ、坂網猟と言うのですね。散弾、つまり鉛玉を受けていないと、珍重されると聞きました。また、この猟で使うのはカスミ網ではありません。
こんなかわいい鴨を食べるなんて残酷な、という人の気持ちもよくわかります。一方で「アオクビはことさらに美味いんだよな」と言いたくなる人の気持ちもよくわかります。アオクビとは、マガモのオスのことです。現代は、「命をいただく」ことを実感できる機会がほとんどなくなった人がとても多いのではないでしょうか。マガモの姿を見ながら、心のなかで、「食べるなんて残酷だよな」という気持ちと「でも食べると美味いらしいよ」という気持ちの葛藤をむしろ楽しんでしまっても良さそうです。晩秋は哲学者みたいな気分に浸るのも悪くはないと思います。

今日は、いつもの場所に、マガモのオスが二羽、メスが二羽いました。この場所はもともと海洋性のカモであるキンクロハジロは多く渡来するのですが、マガモなど陸性のカモは比較的渡来数が少ないのです。なんだ、マガモが四羽ぽっちか、と思われる人も多いでしょうね。

横一列のマガモのメスとオス。後ろ側にいるのはカルガモです。ともに狩猟対象の野鳥です。聞くところによると、カルガモはあまり美味くないとか。どうなんでしょうね。
このような立派な翼で日本海を渡ってくる(一部日本でも繁殖が確認されているようですが)マガモ。夏はシベリア方面に渡って繁殖します。日本には冬場にやってきます。
鴨は正面顔がまたなんとも愛嬌があっていいですよね。
マガモ。これもありきたりの野鳥です。でもよく見てみると、美しい野鳥です。渡来してすぐは夏羽から冬羽に置き換わる時期で今一つの色合いですが、今頃の時期になるとすっかり冬の姿に装いを整えます。ちなみに、この場所は、禁猟区です。

 

2021年10月24日日曜日

街の中でのバードウオッチング

 バードウオッチングは、必ずしも郊外の里山や海辺、川や湖沼に行かなくてもできます。特に樹の葉が落ちる冬場は野鳥が探しやすく入門には最適です。スズメ、カラス、シジュウカラ、ハクセキレイ、メジロ。このような一年中見られる野鳥に加えて冬ならではの野鳥がぼつぼつとみられる時期になりました。

ジョウビタキです。この野鳥も冬の足音が聞こえてくると姿を見かけるようになります。こちらの写真はオスです。オスとメスとでは色合いがだいぶ異なります。冬の住宅地でも比較的容易にみつかると思います。手がかりは、「ヒーヒー」という鳴き声。それにときどき合いの手を入れるような「カッカッカ」といった声を混ぜます。オス、メスともにこのような鳴き声を冬場は発します。この「カッカッカ」という声が、火打石を叩く音のように感じて「ヒタキ」という名前がついた、と言う話を聞いたこともあります。こちらの写真はメス。おっと、虫は苦手ですか。ごめんなさい、少しだけ我慢していただけますか。

この野鳥は、地域によってさまざまな呼ばれ方をしています。私の出身地である関東平野のヘリ、関東山地沿いでは、「ダンゴショイ」と呼ぶ人もいます。「ダンゴショイが来たぁな。もうじき霜だんべ」。はい、私の出身地はべえべえ言葉圏です。「ジョウビタキがきたな、もうじき霜がおりる時期になるだろうな」標準語ではこんな感じか。背中の白い紋様がまるでお団子を背負っているように見えるからダンゴショイ。

「バカっ鳥」とか「バカッチョ」とか呼ばれている地域もあるようです。ジョウビタキは昆虫とかが主食。農家の方が畑を耕す。掘り起こした土から飛び出してくるごちそうを狙って、作業する人のそばに平気で近寄る個体もあるようです。私も過去に手を伸ばせば届く距離にまで迫られた経験があります。ジョウビタキという正式な名前だけではなく、それぞれの土地の人々の営みの中で親しみを込めてつけられた名前も良いものです。ほら、このジョウビタキのオスもバッタ(イナゴかな)が飛び出したのを捕まえました。

日本の特に暖地では冬に見られる渡り鳥です。夏は大陸の方に渡り、繁殖します。一部は長野県あたりでも繁殖が確認されているようです。東京の都心部でみかけることもあります。絶滅危惧とは幸い無縁な種類です。


「垣根の垣根のまがりかど」、曲がりかどで焚火を見かけることはめっきり少なくなりました。防災の点からもしかたがないですね。でも、耳をすませば「カッカッカ」という火打石を叩く音が聞こえてくるかもしれません。そっと探してみてください。きっとオレンジ色の暖かい色の野鳥、ジョウビタキが見つかるでしょう。住宅地の垣根がとてもよく似合います。

2021年10月21日木曜日

枯木で・・・

大阪には関東の者には難物な地名が数多くある。十三と書いてなんで「じゅうそう」なのか。放出がどうすれば「はなてん」と読めるのか。それぞれの背景に、長い歴史の物語があるのだろう。堺市にある百舌鳥、という地名も難読地名としてよく挙げられる。この地名の面倒なところは、漢字だと3文字なのに、読みは2文字なのだ。答えはモズ。そう、あの「モズが枯れ木で鳴いている」のモズだ。

秋になると活動が活発になる里の鳥。縄張り争いが激しくなり、ケーンケンと鋭い声で鳴く。オスだけではなくメスも鳴く。この鳴き声を高鳴きと言う。この声が聞こえるようになると、急に秋が深まってゆく。木枯らし、初霜、スキー場からの雪便り。遠くの山は雪化粧。まさに初冬を呼ぶ声だと思う。
目の後ろに濃い黒いスジが入るのがオスの特徴。なかなか精悍な顔立ちだ。この野鳥、肉食専科だ。一年を通して昆虫や、蛙、カナヘビなどを襲って食べる。樹木のとげなどに獲物を刺して、すぐには食べないという行動もする。モズのはやにえと呼ばれる。真冬に備えた保存食かとおもいきや、結構春になってもそのままだったりする。それでもやはり越冬用の備えだというのが定説になってきているようだが、私はモズと話ができるわけではないので、正確なところはよくわからない。

このモズのオスは、敵の侵入を警戒したのか。下方を睥睨して鋭い声を発していた。
高鳴きは、決して枯木の上だけで鳴くわけではない。飛びながら鳴くことも決して珍しくはない。

目の後ろに黒い筋がみられないこの個体はメス。モズの営巣はかなり早く早春のころを迎えると子育ての時期に入る。残念ながら里山環境の変化からか、東京都区部では絶滅危惧2類、神奈川県でも減少が懸念されている。
「ケーンケン」という高鳴きを聞いたら、立ち止まって高い木の梢を見る。高圧線の鉄塔の上とかにいるかもしれない。家に帰ったら洋服箪笥からコートを出してみるのも悪くはない。


2021年10月6日水曜日

種名鑑別

中秋のころ、毎年繰り返すヒタキ鑑別。さて、エゾビタキか、コサメビタキか、それともサメビタキか。はたまたキビタキやオオルリのメスか。
目の前に飛んできてくれたこのヒタキは。まず、ポイント。風切り羽の隅が白ではなく、鈍いオレンジ色。バフ色、と言います。くりっとしたアイリング。細いですがしっかりしたアイリングです。風切り羽の特徴、初列突出がスラっと長い。おちょぼ口? 小さめの嘴。嘴の裏の黄色のさしぐあい。目と嘴のあいだの白線がうっすら細い。顎の中心にかけてぼんやりと褐色。顎の中心は白。胸部の紋様がぼんやりとしている。ここまでくると大体ほぼ間違いなくあれだ、となります。
更に決定的なもの。下尾筒といわれる部位。尾羽の付け根から腹部にかけての部分に左右対称な下向きの三角形の紋様がある。軸斑と言われるものがある。なかなか軸版までしっかり観察できるチャンスは少ない。
サメビタキ、と断定しても良いでしょう。サメビタキ、コサメビタキ、エゾビタキは秋、ほぼ同じ時期に南を目指します。飛んでいる小さな虫を食べてエネルギー補給。台湾、フィリピン、マレー半島。かなり遠くまで渡るようです。サメビタキ、コサメビタキ、エゾビタキの見分け方は大阪南港野鳥園のウエブサイトがとても参考になります。
おっと、ただでさえすぐそばだったのにさらに私めがけて飛んできた!
地味な野鳥。スズメとどこが違うの?とか言われそうだが、美しい背景に恵まれた。
長い旅路を無事に渡って行きますように。