2021年11月14日日曜日

住宅難

おそらく人にとって最も身近ないきものの一つでしょう。このとりさん、見知らぬ人はほとんどいないのではないでしょうか。そう、スズメです。かなり動きが激しく警戒心もそれなりにある野鳥ですから、意外と撮影にちょっとてこずることもあります。今日は、思いきり見つめられてしまいました。撮影したときはシャッターを切るのに手いっぱいだったのですが、なんとなく絵になっているかな。目の周りが黒い鳥。カラスとかスズメとか、黒ではないけど黒に近い色をしたツバメとか、目の中に光の反射を入れるとより生き生きとした絵になります。
おそらくスズメの視線は完全に私をとらえていたでしょうね。ちょっと対話しているような感じになりました。
「あのねえ、このところずっと住宅難で困っちゃっているんですよ。」
「えっ?スズメのお宿の問題?」
「まあ、お宿というか、住みかと言うか。子育ての場と言うか。」
どうもスズメの営巣場所難は都市部でかなり深刻なようです。住宅の構造が変わって軒下という絶好の営巣場所が次々と無くなっているから。この撮影場所の周囲でも例えば交通信号機のパイプの中で営巣しているような事例すらあります。向井潤吉画伯が遺された藁ぶき屋根の古民家の時代はスズメが巣作りをする場所もたくさんあったのでしょう。昭和の木造家屋でもまだ軒下にスズメの営巣に向いた隙間があったはずです。でも今の住宅は隙間なし。それは断熱効果、省エネルギーの観点からは大いに合理性があります。しかし、スズメにとっては迷惑な状況。
スズメは、人が作り出した環境に適応し、人と寄りそう形で種をつないできたいきものです。人が自らの住居と言う環境を変貌させるという新たな環境変化にまさに晒されているということです。この環境の変化にスズメはどのような適応をしていくのか、進化するのか。
「なあなあ、なんだか面倒なことになっているみたいだよ。」
「そういえば、じいさんとかばあさんとか言っていたよな。昔は巣を作る場所に苦労はしなかったって。」
とか会話をしている、わけないですね。
スズメというありきたりなとりさんだけど、実際に撮影すると結構美しさのようなものも感じます。人の暮らしの風景にとても良く似合って。


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