2022年8月25日木曜日

秋の野山で気を付けたいこと(番外編)

 夏がとにかく好きな私にとって、秋風を感じるとちょっとメランコリックになる。そんな時期を迎えたら野山で気を付けたいことがある。スズメバチ。意外と都市部でもスズメバチは生息している様子だし。今年もすでに何種類かのスズメバチを見つけています。

今年写真に撮ったスズメバチの種類を紹介します。最初はこれ。あれっ?襲われている?

はい、襲われています。クロスズメバチがシオヤアブのオスの餌食になっています。クロスズメバチはスズメバチの仲間でもミツバチより少し大きいくらい。シオヤアブの餌食になることも結構あるみたいです。また攻撃性もさほど高くないとも言われています。信州では蜂の子を食用にする地域もありますね。このクロスズメバチの幼虫です。とはいえスズメバチ。刺されると激痛。場合によっては重症化の可能性もあるようですから刺されないようにするべきです。

一方、シオヤアブ。これは虫界トップレベルのプレデター(肉食系)ですが、人に危害を加えたという話は私は聞いたことがありません。スズメバチではなく、アブです。蠅とか蚊といったグループの昆虫です。

続いてこちら。モンスズメバチです。針葉樹の根元に巣を作っています。モンスズメバチは攻撃性もかなりあるようです。そもそもこのように、巣があるのがわかったら近づかないのが鉄則。ちなみにこの写真は400mmの超望遠レンズで撮影し、拡大処理したものです。十分な距離をとっています。モンスズメバチに特有な要注意点として、夜もかなり活動すると言われていることです。クヌギ、コナラなどの樹液にも集まります。夜の昆虫採集の際には特に気を付けたいところ。

次は、こちら。チャイロスズメバチです。チャイロスズメバチはスズメバチのなかでも珍しいと言われています。こちらは針葉樹の洞に巣を作っています。チャイロスズメバチは他のスズメバチの巣を襲って乗っ取ってしまう。襲った先の女王バチを殺してしまい、しばらく襲った先のスズメバチの働きバチをいわば奴隷にしてしまうという習性があるそうです。チャイロスズメバチに襲われる被害に遭うのは、モンスズメバチの場合が多いそうです。

今年撮った写真ではないですが、チャイロスズメバチはこのようにまさに茶色の蜂です。このチャイロスズメバチの巣はこの場所を管理するNPO団体の方が処置してくれました。チャイロスズメバチは中型のスズメバチですが、攻撃性がかなり高く危険な種類だと言われているようです。

続いて、こちらは世界最大級のスズメバチ。そう、オオスズメバチです。毒の強さ、毒液の量、攻撃性、いずれをとっても最強。特にこの巣には絶対に近づきたくない。もちろんこの写真も十分な距離を取っています。

スズメバチ。カブトムシやクワガタムシなど子供に人気な虫たちが集まるところに、集まる昆虫です。人気の虫を集めるためにトラップをしかけると、そこにはスズメバチも来る可能性がかなりあります。特にこれから晩秋にかけてスズメバチの活動が、個体数、活発さともにピークを迎えます。子供たちが刺されたりしないよう、十分な注意が必要です。昆虫採集のためのトラップも、ここで片付けましょう。夏にトラップをしかけたまま放置していませんか。それは雑木林のゴミになります。ゴミは片付けてください!

世の中にはオオスズメバチなんか気にしないというつわものも居るんですね。オオスズメバチとにらみ合っているみたいな小さな虫。ヨツボシオオキスイというコガネムシの仲間。スズメバチは相手にしないみたいです。ヨツボシオオキスイもスズメバチ何吹く風、そんな感じで。もちろん、人はスズメバチとにらみ合ったり絶対にしたくないです。

他に、今年、キイロスズメバチ、コガタスズメバチも確認しています。参考までに今年撮った写真では無いですが。

こちらがキイロスズメバチです。
そして、こちらはコガタスズメバチです。キイロスズメバチもコガタスズメバチも共にオオスズメバチよりはかなり小さいですが、やはり厳重に注意するべきスズメバチです。

スズメバチではありませんが、アシナガバチも秋はスズメバチ同様注意が必要です。

2022年7月18日月曜日

こどもに声をかける(番外編)

 今年も青い蜂が見られる季節に。ルリモンハナバチ。

写真を撮っていると、隣に母親と、7歳くらいかな、お兄ちゃんと、5歳くらいかな、弟ちゃんが来て花を覗き込みはじめた。お兄ちゃんがルリモンハナバチをみつけて、

「あっ蜂・・・、うううん、ちがう蛾か・・・」

と言う。思わずつぶやいてしまうんですよね。結構大きな声で。「惜しい!」って。親子がこっちを見た瞬間にマスク着用。そして、

「これはね、黒いカノコガ(下の写真)のように見えるかもしれないけど・・・」

「実は蜂なんだよ。今撮った写真、見せてあげるね」

「えっ、こんな青い蜂なんだ!」
「綺麗だわねえ。」
「ねえ、ぼくにもみせてよおお!」
「ほら、見える?」
「うん!」

これ、大切だと思うのです。世知辛いご時世だから「見知らぬ人に声をかける」というのはなかなか難しいのだけど、ここは思い切って。

いきなり頭ごなしに「貴重な昆虫が居るんだから採っちゃだめだよ」とか居丈高に言うのに比べて。(まあ、そういう人当たりの人もいる。それは人それぞれだからどうのこうのいう事ではないけど)。居丈高ではなくて、こどもの視線に合わせたやりかたでお話をすると、ついでにすこしほかのお話もできる。たとえば、生態系の話とかちょっと込み入った話もやんわりと。子供たちの虫かごの中を見て。

「あっ、アマガエルも捕まえたんだね。」
「うん!」
「アマガエルさんはね、たくさん増えてしまい過ぎそうな虫さんとかを一生懸命食べてくれる。そうすると、お花とかお米とかが喜ぶんだよ。観察が終わったらもと居たところに放してあげようね。」

(でも今度はカエルさんがたくさん増えてし過ぎると虫さんが居なくなりすぎて、こんどは植物が元気になりすぎて困っちゃうよね。そうすると、カエルさんが大好きなサシバさんとかが喜ぶんだ・・・とかまで展開するかどうかはさておいて)。

とかお話しできるチャンスがあると思う。こういう時はなるべく私はしゃがんで子供が下目線で私を見るように心がける。上からこどもを見下ろすのではなくて。

最近、「Give and Take, 「与える人」こそ成功する時代」という本を読んだ。与えるものを持てる人になりたいし、もしすこしでもこどもに与えられるものがあるのならば、おしげなく与えられる人になりたい、と、常々思う。

おっと、おかあさんの手の上でダンゴムシが遊んでいる。なかなかあっぱれなおかあさん。すてきだった。とくに弟くんの方は小学館の昆虫図鑑を一冊すでにボロボロにしてしまっているそうで。ああ、私と同じだ・・・。この親子にも青い蜂が幸せを運んでくれますように。

2022年5月12日木曜日

バランスが崩れたとき

 今回のとりさんは、ツツドリと言う夏鳥です。ツツドリという名前のいわれは、鳴き声です。筒の口を手のひらで叩くと「ボンボン・・・ボン・・・ボンボン」そんな音がしますよね。鳴き声がまさにそれなんです。筒を叩くときのような鳴き声、それでツツドリです。鳩のように見えるかもしれませんね。サイズもドバトに近いですが、嘴の形や腹部の模様が明らかに違います。

この野鳥、子育てのやりかたがかなり変わっています。自分では子育てをしないんです。ウグイスなど他の鳥の巣に卵を産み、雛が他の鳥の卵より一足先に孵化する。するとほかの卵を巣から押し出してしまう。産み付けられた野鳥はツツドリの雛を一生懸命育ててしまう。このような子育てのしかたを托卵と言います。
他にもそんな子育てのやりかたをする鳥がいますね。カッコウ、ホトトギスは托卵をする野鳥として有名です。またジュウイチという野鳥も托卵します。ジュウイチも鳴き声で名付けられました。鳴き声が「ジュウイチ」と言っているみたいに聞こえる。ツツドリ、カッコウ、ホトトギス、ジュウイチ、これみんな同じ種類の野鳥です。姿もかなり似ています。この季節は鳴き声ではっきりわかりますが、秋の渡りの時は鳴き声を立てない。だから区別が難しい。
ところで、話は変わります。ツツドリの周りの木の葉が異様に感じませんか? そうなんですミズキやガマズミの木なのですが、食害を受けています。しかも丸坊主にちかいくらいまでに。
(注意:これから先、毛虫がでてきます)。
この場所は、ここ数年この時期になると、ミズキやガマズミを食害する蛾の幼虫(毛虫)の大発生が繰り返されています。ほとんど丸坊主になるほどまで食害されるので樹勢にも影響があるのではないかと心配されています。異常発生と言っても良いでしょう。毛虫の正体は、キアシドクガという蛾の幼虫。ドクガと名付けられていますが、皮膚炎を起こすような危険は全くありません。

次の写真。ツツドリがその毛虫を食べようとしています。ツツドリは毛虫が大好物。おそらくこの環境はツツドリにとっては酒池肉林のように見えるのかもしれません。そして、もしかすると、ツツドリがキアシドクガの異常発生を抑える切り札の天敵になるのでは、と、一瞬思ったのですが、難しいですね。まず、ツツドリは子育てをしない。子育てのために多量の餌を必要とするけど、ツツドリはエサは自分で食べるだけで十分。しかも群れをなして渡ってくるような野鳥ではない。基本は単独行動。ああ、これはずっと毎年キアシドクガの大発生が続いてしまうのか?
と、思って、最近のキアシドクガの状況がどうなのか調べてみました。一部では、異常発生が終わりつつあるといいます。異常発生が始まってから5年くらいでおさまるようなのです(参考)。理由は、あまりにも大発生してしまうものだから、食べるものがなくなる。すると、どの幼虫も成長できなくなり絶えてしまう。そういう構造らしい。すると、やがてミズキもガマズミも樹勢を取り戻すと言う。なるほど生物の繁殖はそのような形でコントロールされることもあるのですね。

2022年4月7日木曜日

あっ!

捕まえ方が中途半端だったんですね。ヌマエビの仲間だと思いますが。

悲劇はこの次に置きます。カワセミにとっては悲劇。ヌマエビにとっては危機一髪脱出。
しばし、未練がましく落ちた方向を見つめていました。


2022年2月22日火曜日

イカロス

公園のドバトの群れに危機が。オオタカ(おそらくまだ若齢)がアタックをかける。ドバトの視点からは幸い、オオタカの視点からは残念ながらアタックは失敗。そのまま高度を上げてゆくオオタカ。高層雲がかかる大空に。そこには、真冬の太陽が。あたかも太陽に向かって飛翔しようとしたイカロスのように。
そのまま本当に太陽に被りそうに。こちらはレンズで喰らいついて行く。本当に瞬間の出来事。写真には絶対の真理があって、シャッターを切らなければ写らない。(最近は、シャッターを切る前の画像も撮っておいてくれるカメラもあるけど)。
普段は、あら失敗と思ってしまうゴーストだってこの際どうでもいい。というかむしろいいアクセントになっているかも。そして・・・。
本当に太陽のど真ん中を通った。
これを長時間やったら撮像素子に致命的なダメージが及びそうだ。だけど、これはほんの瞬間。もちろん太陽を肉眼で見るなどとは絶対に避けるべき。片目をつぶって、片目はファインダーのなか。ファインダーの中はEVF(電子ビューファインダー)だからEVFの限界以上の光は出ないはずだからとりあえず大丈夫のはず。旧来のOVF(光学的ビューファインダー)だと、厳しいかな。

そしてオオタカは完全にホワイトアウト。まさか、ここで蜜蝋で固めた羽が溶かされてしまったわけではあるまいが。
次の瞬間。太陽から抜け出す鳥影。
これでね。オオタカを完全に解像させたりしたら、かなりのクオリティーの写真になるのだろうけど。でも、写真の面白さ。瞬間との出会い。瞬間の切り取り。


2022年2月21日月曜日

パンクなヘアスタイル?

なかなかのヘアスタイルでしょう。ちょっとパンクな感じ?とりさんの名前はカシラダカ。頭の羽毛が高くそびえている。だからカシラダカ、かな。関東地方で見られるのは冬。冬鳥です。夏場ははるかカムチャッカ半島のほうまで渡り、繁殖します。このカシラダカと言う野鳥、国際的には絶滅危惧種に指定されています。日本では今の時点では、高知県(絶滅危惧2類)、大阪府(準絶滅危惧)のみ絶滅危惧指定されていないのですが、個体数は明らかに年を追って減少しているようです。(参考:カシラダカが絶滅する?・山科鳥類研究所
無論、私はカシラダカの減少の理由が何か。関心はありますが、わかりません。ですが、地球環境の急激な変化が関係するのだとすれば、二酸化炭素やメタンガスなどによる地球温暖化は大いに気になります。
冬場の餌不足は心配ではないかって?そこはしっかりいろいろ見つけているみたいですよ。ここではイノコズチの種をほおばっていました。
全体的には地味な感じの野鳥です。スズメとどう違うの、という声も聞こえそうです。でも、スズメにはこのパンクなヘアスタイルはありませんぜ。




2022年1月13日木曜日

野鳥が少なくなった(???)

 広い公園で、常連さんたちとの会話。

「以前はもっとたくさん野鳥が居たよね」

「最近、本当に少なくなったね。特に今年は酷いね」

私は、この会話はちょっと勘弁、と、思っている。実際、野鳥が少なくなったとは思わない。たとえばメジロ。すごく大きな群れで飛び回っている。シジュウカラも、ヤマガラも、エナガも、カワセミだってカルガモだってハシボソガラスだって、ヒヨドリだって。コゲラもいるし、(ちょっと気になるけど)最近はリュウキュウサンショウクイも。ジョウビタキ、ルリビタキ、オナガ、スズメ、ハシブトガラス、アオゲラ、アオジ、猛禽類も。むしろ以前より多様性も数も増えているのではないかとすら思う。

この会話、何に抵抗感があるかと言うと、その次の言葉が大体・・・。

「この公園の管理がいい加減だから。」「管理者が野鳥が嫌がることばかりやる!」

人によっては、

「自然公園なのだから自然に任せるべきだ。手を加えるべきではない」

と来ることもある。これが、どうにも違和感満点なのだ。

私は決して公園の管理が、行政がいい加減だとは思っていない。予算、人手など限られた条件がいろいろあるだろう。倒木対策など緊急性が求められるものもある。そもそも公園に来る人がバードウオッチャーだけではない。さまざまな人が来る。それぞれが公園にさまざまなことを求める。それぞれにこたえられるように一生懸命に頑張られている。そのような人たちのことを思えば、とてもではないけど「管理がいい加減だ」などとは言えない。メジロちゃん、キミだってそう思うよね。

今日、NHKラジオ第一の番組で小学校、中学校、高校と同じだった級友が出演した。国立公園についての話。自然環境保全のエキスパートとして活躍してきた彼の功績はすごい。番組最後に聴取者から寄せられた質問がまたすごかった。

「私のような者が、国立公園を利用させていただいている中で、公園に対して何か貢献できることはないでしょうか」

この質問に胸を打たれた。投稿者に、また、これを選択したNHKの番組制作側にも拍手を送りたい。この聴取者の姿勢。胸に刻みたい。単に公園を利用させていただくだけではなく、何か貢献したい。この貢献とは、たとえば公園の維持管理にあたる行政・現場担当者に敬意を払い、感謝の心を持ち、現場の皆さんが気持ちよく仕事ができるような雰囲気づくりをする。それも立派な貢献だと思う。もしかすると、気が付かなかったこともあるかもしれない。そのようなことも、クレームではなく、お知らせというかたちでお伝えする。そのようなシーンがあっても良い。またボランティアを募集されたとき、もし応えられるなにかがあるのならば、積極的に手を挙げる。私は、そのようなスタイルで行きたい。

私は仕事では、世界中のソフトウェア開発者が協力し合って世界中さまざまなシステムを支える基盤を作っていくプロジェクトと共にいる。それぞれが互いを信頼しあって、できることを惜しみなくできる範囲で無理せずに貢献しあう。その積み重ねがとてつもない成果をもたらしている。そんなジョンレノンの「イマジン」のようなことが、丁々発止、生き馬の目を抜くような国際社会で起きているのかって? 現実、起きていることです。夢でも見ているんじゃないかって、とんでもない!

それが小さな公園でも少しでも見えればうれしいよね。メジロちゃん!


あらっ、飛んで行っちゃった。