アキアカネが今年も長い旅路の末に戻ってきました。このあかとんぼの生活史は初夏に始まります。里の田圃で羽化したアキアカネは盛夏のころまでは高原に移動して暮らしています。八ヶ岳山麓などでアキアカネが群舞しています。それがこの季節になると戻ってきます。
ゆうやけこやけのあかとんぼ
負われて見たのはいつの日か
子守の奉公人に負われて見たのがこの赤蜻蛉なのでしょうか。三木露風。羽化したばかりの初夏の風景を思います。
やまのはたけの桑の実を
小篭に摘んだはまぼろしか
梅雨時の思い出です。私が子供の頃は西多摩の地にはあちらこちらに桑畑がありました。濃い紫色に熟した桑の実のほのかな甘さ。口の周りに色が付いてばれてしまう。
十五で姐やは嫁に行き
お里の便りも絶え果てた
奉公人の娘。数えで十五歳になってもう嫁いで行ってしまった。その寂しさ。姐やのふるさとは山里だったのでしょうか。時折来るふるさとからの便りを無心で読んでいた。そんな姐やの姿もまぶたに焼き付いていたのでしょう。
そして。
ゆうやけこやけのあかとんぼ
とまっているよ、竿の先
竿はイネを乾燥させるはぜかけの竿でしょうか。尾花が咲き、秋風に乾いてきた稲穂がかさかさと音を立てます。今年も姐やのふるさとから帰ってきました。アキアカネ。何気ない里の日常の中に。
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